世の中に　絶えてサクラの　なかりせば

　時代は流れ　時は西暦２５１２年

　人間が　人間をつくる時代となりました

　人口の足りない国には"国民"を　軍隊には"兵士"を・・・

　２３００年から始まった"人間製造プロジェクト"における

　科学技術の発展は　実にすばらしいものでした

　この２００年間で　人間は"ただつくる"ことから

　"計画的につくる"という技術を得ました

　成長の具合も　感情も　性格も　寿命も

　何でも調節して　人間をつくるようになりました

　それでも相変わらず　愛とか正義とかは　失われてはいませんでした

　それでも相変わらず　憎しみや悲しみは　どこにでもありました

　ただ少し　世界が無機質になっただけで　地球は変わらずに浮かんでいました

　太陽や　月や　星や　風が　人間の科学に押されて　消えただけで

　草木や　花や　虫や　鳥が　自然の中には　いられなくなっただけで

　人間は　変わることなく　地面の上に立っていました

　これは　そんな時代の　ある遠い遠い国の　小さな恋の物語...

世の中に　絶えてサクラの　なかりせば